大津の会社 比大学と教育研究
ゲーム機の普及や猛暑により外遊びが制限されるなど、子どもたちの運動の機会が減少するなかで、大津市の企業「リーベ」がごっこ遊びを導入した運動プログラムを開発している。同社代表の阪田隼也さん(39)は「楽しいことをして、体が勝手に動く運動あそび」と目標を掲げ、5月には、フィリピンの国立大学と幼児体育カリキュラムについての共同研究のための契約を締結した。(小手川湖子)
「保育者も気負わず 楽しく」
阪田さんは、運動やスポーツで子どもと遊ぶことが好きで、びわこ成蹊スポーツ大学で幼児体育を専攻し、中学、高校の保健体育の教員免許などを取得し、京都市内の小中学校で保健体育の講師になった。中学生や小学校高学年の子どもたちとふれあう中で、「運動が嫌いな子はなぜ、いつ、嫌いになったんやろう」と就学前の身体作りの在り方に疑問が生まれた。
運動に好き嫌いが生まれる前に関わりたいと考え始め、2012年、独自のリーベ式運動あそびを開発。乳幼児期の運動あそびプログラムや、遊びの創造性を高める保育者向け体験型研修を展開し、関西を中心に幼稚園・保育園などで延べ30万人以上で実施されている。
跳び箱や鉄棒、マット運動などでは、順番を待たせ1人ずつ行うやり方が一般的で、運動の得意、不得意が注目を集めがちという。
リーベ式では、運動ができる、できないが気にならないごっこ遊びを導入。全員が待ち時間なく動き続け、運動を楽しむ。保育者がそれぞれの子どもの動きを評価するよう意識することで、順番を待てない子への注意や、技術指導、補助に手を取られないため、保育者自身も純粋に楽しむことができるという。
子どもが楽しみながら、全身運動できる工夫として、独自に開発した輪状の遊具を用いた運動では、ストーリー仕立ての「ごっこ遊び」にする。
輪状の遊具を床に立たせ、輪をクジラの口に見立てて「クジラがおなか痛いみたい」と子どもに伝えると、子どもはクジラの口に入るように輪をくぐって遊び始める。保育者が雷が鳴ったことを伝えると、子どもは輪から離れて逃げ、たとえ、逃げるのが遅くても、「口にぶつからないように逃げられたね」などとほめるという。
「幼児期の育成年代こそ、大人が子どもを認めてあげて、落ちこぼさないことが大切」と阪田さんは熱を込める。
さらに、保育者が楽しむ心が重要だといい、「『意味のあることをしなきゃ』『成長させてあげなくちゃ』と気負わず、楽しむことが大事だ」という。
フィリピンでは、貧困で学校に通えない子どもが多く、安全上の懸念から安心して外遊びができない地域もあり、幼児期の健康的な身体的発達と教育の質向上が求められている。
国立フィリピンノーマル大学との共同研究では、同大学研究者と、リーベスタッフらによる専任チームを設置する。保育現場の視察や調査のほか、リーベ式運動あそびを取り入れた運動指導やその効果の検証、幼児体育の教材やカリキュラム開発を行い、私立幼稚園を手始めに、公立園への普及を目指すため、保育者への育成研修も行う予定。
26日から3日間、フィリピンで開催する、アジアの教育関係者が集まる国際教育会議に参加し、リーベ式運動あそびをPRする。
「国や文化が違っても、子どもを大切に育てたいという思いは共通している。フィリピンの文化を尊重した保育で、子どもたちの輝かしい未来作りに貢献できれば」と意欲を語った。