積極攻撃 一気に逆転
第107回全国高校野球選手権滋賀大会は26日、大津市のマイネットスタジアム皇子山で決勝が行われた。昨年準優勝の綾羽が6―3で連覇を狙った滋賀学園を破り、春夏を通じて初の甲子園出場を決めた。全国大会は8月5日、兵庫県西宮市の甲子園球場で開幕する。
綾羽は一回、山本の左中間二塁打などで追いつくと、経免のスクイズで勝ち越し。二回には北川の2点中前打で加点した。先発藤田は二回以降立ち直り、七回途中から小刻みな継投で相手打線をかわした。
滋賀学園は九回、一死満塁の反撃機をつかんだが、内野ゴロの間の1点に終わった。
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スコアボードの滋賀学園の一回に「2」が入るのは、昨年の決勝と同じ。昨夏の綾羽は、そこから1点も奪えずに敗れた。千代監督は「これをひっくり返すために1年間やってきたんやぞ」とベンチに戻ってきた選手を鼓舞した。
その裏、敵失で1点差として打席には4番山本(3年)。相手4番が先制打を放っていただけに、「意識はしていた。4番として絶対にランナーをかえす」と2球目の第1ストライクを左中間へ同点二塁打。さらに、一死一、三塁から経免(3年)が初球スクイズを決め、一気に逆転した。
選手が第1ストライクから打って出れば、ベンチも初球からスクイズと積極的に動いた。「点の取り合いになる。同点だけでなく、ひっくり返しにいった」と千代監督は主導権を握った場面を振り返った。
二回に2点中前打を放った主将の北川(3年)は、「去年負けてから悔しい思いをしてきた。全員がここで勝つためにやってきた」と喜んだ。1999年の創部以来、これまで3度の決勝では、あと一歩で涙をのんできた。4度目の挑戦となった今大会、積極的な攻撃が甲子園への「最後の扉」を開いた。(青山大起)
流れ呼ぶ投球 聖地でも
○…綾羽のエース・藤田(3年)は一回、四球に暴投と制球が乱れ2失点。千代監督に「顔を変えていけ」と言われ、不安げな表情で投げていたことに気づいたという。二回以降は緩急をつけた投球で無失点。今大会最長となる6回1/3を投げ、後を託した。
決勝を前に相手打線を映像で研究。弱点とみた外角高めを丹念に突き、二~六回はフライで8個のアウトを奪った。甲子園に向け「今できる全力で、流れを持ってくる投球をする」と闘志を燃やした。
<白球賛歌>
ダブルエース 誇り胸に
滋賀学園3年 土田悠貴投手
背番号10の滋賀学園・土田悠(3年)が、二回一死二塁の場面で救援に向かった。背番号1の長崎(3年)の不調は「今までほとんどなかった」。エースは、すでに5点を失っていた。
昨秋は自身の調子が悪く、ライバルに比べ「なんでできないんだろう」と葛藤。走り込みや体幹を鍛える基礎練習に取り組み、安定した投球ができるようになった。ダブルエースと呼ばれた今大会、準決勝までの4試合は土田悠が12回を投げ1失点、長崎が12回無失点と快進撃を支えた。長崎の思いを背負って6回2/3を3安打1失点。味方の反撃を待ったがかなわず、「いいピッチングをしても勝利よりうれしいことはない」と悔しさをにじませた。
昨夏と今春の2度の甲子園マウンドに立ち「充実した3年間だった」と振り返る。「(長崎と)また同じチームで投げたい」。再びダブルエースと呼ばれる日が来ることを信じている。(小手川湖子)