市、長浜赤十字病院と協定
高島市と長浜赤十字病院(長浜市)は、ドクターカー運用に関する協定を締結した。市内には最も重篤な患者を受け入れる3次救急の指定病院がなく、これまで緊急の場合は同病院や大津市内の病院に搬送することが多かった。24日には初の連携訓練が行われ、高島市消防本部の担当者は「市民の緊急時の救命率向上に役立つ。これからさらに連携を深めていきたい」と話している。(角川哲朗)
運用範囲拡大 重症者の救命率向上へ
ヘリの課題解消
高島市内では、高島市民病院(勝野)とマキノ病院(マキノ町)が2次救急対応の医療機関に指定されている。市消防本部によると、急病などで緊急手術が必要な患者を3次救急の長浜赤十字病院に直接搬送した例は2022年に7件、23年に3件、24年に6件あった。
県内の救急医療体制を巡っては、15年に済生会県病院(栗東市)を基地として、県内全域と京都府南部を範囲とする「京滋ドクターヘリ」の運航がスタート。県内全域で30分以内に救急医療を提供できる体制が整った。
ただ、荒天でヘリが飛べないケースをはじめ、着陸場所は限られ、飛行中は処置がほぼできないなど難点もある。そこで、長浜赤十字病院はドクターカーの運用範囲を広げることでこれらの課題を少しでも解消し、救命率の向上につなげようと、今年4月、市に呼びかけて連携協定を結んだ。
ドクターカーには同病院の医師や看護師、救急救命士などが乗務し、ドクターヘリの要請基準と同じ重症者を対象とする。医療機関に搬送するまでの間に医師による処置が可能で、救命率や予後改善に効果が期待できるという。
救急車と連携
24日に行われた同病院と市消防本部との連携訓練では▽70歳代男性が交通事故で頭部から出血▽70歳代男性が急性心筋
患者搬送中の救急車から、合流場所に向かうドクターカーの医師に携帯電話で患者の状態を逐一報告。医師が「心臓マッサージと挿管の準備をしておこう」などと同乗の看護師らに指示し、迅速な受け入れに向けて動いていた。
同病院のドクターカーの運行時間は平日午前8時半~午後5時で、患者の費用負担はない。ドクターカーの出動を要請するかは同本部で判断する。
訓練に参加した同病院の救急医・浦山守医師(47)は「救急車とドクターカーの双方でいかに迅速に的確にコミュニケーションがとれるかが課題」と指摘。「一つ一つの動作を確実にして、基本に忠実に行動できるようにしていきたい」と話した。同本部の青谷守消防長は「課題を洗い出して訓練を重ね、救命率向上に向け精度を高めていきたい」と力を込めた。