高島の縫製会社 持ち手三つ編み 形こだわり
高島市の縫製会社「オオミスタイル」が琵琶湖のヨシを織り込んだ帆布を使ったオリジナルバッグを開発し、人気を呼んでいる。6月27日には大阪・関西万博の「滋賀魅力体験ウィーク」で帆布を使ったブレスレット作りなどの体験教室を開く予定で、専務の中矢佳希さん(30)は「ヨシの魅力や文化を伝えることができれば」と意気込んでいる。(角川哲朗)

同社は1975年創業で、主にアパレルの縫製加工を受託してきた。アパレルメーカーなどが生産拠点の海外移転を進める中、新たな活路を見いだそうと、2000年頃からカバンや小物などの受注を増やしてきた。
しかし、請負業務のみにも限界を感じるようになってきたため、自分たちで何か作ろうとアイデアを練るように。そんな中、琵琶湖のヨシを活用した高島産の帆布に出会い、オリジナルのバッグを作ることを決め、2024年に自社ブランドを設立した。
ブランド名は「nuno ni shitai.」(ヌノニシタイ)で、縦糸と横糸が組み合わさって一枚の布になるように「地域のストーリーと人がつながり、さらに人から人へ広がってほしい」との願いを込めた。中矢さんは「高島や滋賀の歴史や文化を伝えるという理念を基に、購入してもらえる方に製品と一緒に琵琶湖の環境の魅力を紹介したかった」と話す。
バッグは独創性のある形にこだわった。持ち手のサンプルを約100個並べて社内で雑談していた時に、「トートバッグの持ち手が三つ編みだったらかわいいのでは」と同ブランドのディレクター・後川梨愛さん(32)が思いついた。三つ編みの長さは長すぎても短すぎてもカバンの形がきれいにならず、試作品を何十個も作るなど、1年以上かけて商品を完成させた。
24年11月からクラウドファンディングのサイトで販売したところ、目標額の30万円を最初の2~3時間でクリア。中矢さんは「達成できるか不安な中であっという間に超え、苦労が報われた感じでうれしかった」と振り返り、縫製をほぼ一人で担う後川さんは「『シンプルな中にも個性がある』を目指した。帆布を使ったカバンは多く、その中で個性を出すことに苦心した」と話す。
万博で体験教室
バッグは市内の地域資源や観光資源等を活用した新商品・新サービスを表彰する高島市商工会の「高島ええものグランプリ」で24年度の審査員特別賞を受賞。これをきっかけに、市商工会や県北の近江振興事務所から「ヨシの文化を全国に広めよう」と持ちかけられ、万博での体験教室が実現した。
体験教室は6月27日午前10時~午後7時、万博会場内の関西パビリオン「多目的エリア」であり、高島市に関するクイズのほか、三つ編みのブレスレット作りを楽しんでもらう。中矢さんは「滋賀固有の文化であるヨシをPRするとともに、三つ編みのひもを通して琵琶湖の環境や保全活動への理解を深めるきっかけになれば」と期待している。