村井・県教育長に聞く
働き方や不登校改善 意欲
県教育長に就任した前県子ども若者部長の村井泰彦氏(60)が読売新聞のインタビューに応じ、県立高校の定員割れや来年2月に実施する公立高入試から適用する新制度など、県の教育界が抱える様々な課題などについて語った。(聞き手・矢野彰)
――4月に就任した。抱負や力を入れて取り組みたいことは。
公務で訪れた(県内初となる)夜間学級の開設式で、新入生の「ワクワク、ドキドキしている」という言葉に感動した。学びは本来ワクワクするもの。「教え込む」から「能力を引き出す」学びへ転換したい。教職員の働き方改革も必要だ。いじめや不登校の問題を踏まえ、学校を安心安全な居場所にする。
――少子化が進み、定員割れする県立高校もある。統廃合についての考えは。
通学できる範囲に学びの場があるのは大事。すぐ統廃合が必要とまでは考えていない。新学科を設けた守山北高(みらい共創科)と伊香高(森の探究科)、国際的な教育プログラム「国際バカロレア」を導入した虎姫高などで特色を打ち出している。一方で、普通科を選ぶ生徒や小規模校が向く生徒もおり、色んな受け皿が必要だろう。
――公立高の2026年度入学者(現・中学3年生)が対象となる入試から新制度が始まる。
学校独自型選抜が特徴で、各学校の「スクール・ポリシー」に基づいて求める生徒像を示す。単にテストの点や偏差値ではなく、学校のポリシーに共鳴し、何を学びたいかで選んでほしい。保護者や子どもに新制度の狙いをしっかり広報する。
――全国学力テストの平均正答率は10回続けて全国平均以下など低迷している。
平均値で語ることにあまり意味はない。地域や市町、学校、クラスによって結果は異なり、結局一人一人を分析して対策を考えることになる。生徒と向き合う先生たちに何が必要か考えてもらうのも大切だ。
――いじめ・不登校への対応は。
4月に施行した「県子ども基本条例」に基づき、子どもには自分の権利や基本的人権を理解してもらい、大人は子どもの意見に耳を傾ける。不登校は(支援の方向性を示した)「しがの学びと居場所の保障プラン」に基づいて対応する。校外の教育支援センターやフリースクールとの連携も必要だし、引きこもり状態の子に学びを届ける策も考えたい。
――授業における生成AI(人工知能)の活用についての考えは。
どう使うかは個別に考えるが、子どもたちも何らかの形で付き合う必要はある時代。効率的に物事を行い、情報を得られるという意味で活用は十分考えられるが、まずは生成AIについての一定の知識が必要だ。
◇ むらい・やすひこ 兵庫県西宮市出身。神戸大大学院工学研究科修了。機械設計のエンジニアから転じて、1996年に滋賀県職員となった。県教育委員会事務局での勤務が長く、県から豪シドニーにある機関に2年派遣されたこともある。「ウィル(意志)」を持って仕事に臨むのがモットー。