最澄伝来の種? 朝宮茶の源流
朝宮、
唐代の飲み方再現 ■ 文化調査や発信
坂本地区は、
八十八夜(5月1日)に合わせ、同プロジェクトの一環で唐代の茶を再現するイベントが開かれた。参加した47人は、グループに分かれ、近隣の里坊などの石垣から新芽約1・2キロを収穫。この日は、せいろで蒸して
餅茶づくりを体験した京都市の会社経営小野蓮音さん(25)は「朝宮茶や座禅など日本文化を伝える事業をしているけれど、ここまでお茶を作るのが大変だとは思わなかった。貴重なものだったことも伝えていきたい」と話した。
同プロジェクトは2021年に茶樹資源保存と文化的活用を目的に、茶の愛好家や研究者、比叡山関係者らが始め、坂本地区の茶樹の分布や歴史的資料の調査をしている。
代表の堀井美香さん(59)は「(今年は)日吉茶園が再整備され、貴重な茶樹資源の保護も一段落したと思う。今後は活用策や多くの人に参加してもらえるイベントを考えたい」と話す。
同プロジェクトは、茶の歴史に詳しい市歴史博物館学芸員の高橋大樹さんに協力を依頼し、歴史を学んできた。
高橋さんによると、歴史書「日本後紀」に、815年の嵯峨天皇の近江行幸で、唐で学んだ僧が茶を煎じて差し上げたという記述がある。また、18世紀の絵図「山門三塔坂本惣絵図」(国立公文書館蔵)には、今の日吉茶園とほぼ同じ場所に「御茶園」と書かれており、比叡山坂本周辺の茶の銘柄を記した「台麓銘茶目録」(1890年)からは、玉露「湖心」、煎茶「鳰の月」「志賀雪」などが地元の銘茶として販売されていたことがうかがえるという。
戦後の1953年には、日吉大社を中心に「日吉茶園」を国の史跡に申請しようとした動きもあった。市は市文化財調査・保存・活用計画に基づく「坂本における茶の文化総合調査」として、2024年から3年計画で、日吉茶園の移設に伴う現地調査を行い、今後、中国にある茶樹の調査なども検討する。同プロジェクトと連携して、地域おこしの資料の提供や大津の茶文化の発信にも努める。
今回、同プロジェクトで仕込んだ餅茶は、最澄が開いた比叡山延暦寺と日吉大社に奉納し、10月25日に同大社で坂本餅茶のお披露目茶会を行うという。