大津市で、市立幼稚園のあり方を巡る議論が続いている。教員の給与を保育士の水準に引き下げる条例案が市議会で否決され、焦点は、28園ある幼稚園の再編計画に移った。再編対象となる園の保護者からは反対の声も上がっており、市の対応に注目が集まっている。(生田ちひろ)
■教員不足懸念
「幼稚園教員を目指す人が『大津市はやめておこう』とならなければいいが」。市立幼稚園で働くある若手教員が漏らす。
大津市は、待機児童が2025年まで2年連続で全国最多となり、保育士と幼稚園教員を一本化して柔軟に配置できる「教育保育職」の26年度の全面導入を目指した。だが、給与を保育士水準に下げる案のため、市教職員組合が反発した。試算では、大卒で勤続18年目の場合、月1万4760円下がる。SNSでも「賃上げの時代に賃下げとは」などと炎上し、市が提案した条例改正案は5月に否決された。
ただ、市によると、他の自治体では保育士と幼稚園教員を別採用するケースは少なくなっているといい、大津市は今春から、新規採用を教育保育職に一本化した。
当初は新規採用者は幼稚園に配属される可能性があったが、否決を受けて「同一労働同一賃金の観点から、給与の異なる幼稚園に配属するのは問題」として採用された30人全員が保育園とこども園に配属され、幼稚園配属はゼロに。幼稚園では今年度、昨年度の3倍にあたる9園で、学校の教頭にあたる保育主任が担任を兼務している。
現場は冷静に受け止める。市立仰木の里幼稚園では、4月から船本由芙・保育主任(39)が4歳児の担任を兼ねる。常勤教諭は園長含め4人で、パート職員を含め12人で35人の園児を保育する。船本保育主任は「子どもへの熱意や保育の内容は変わらず、質の低下はない」と話す。
■年度内に計画策定
否決後、市幹部が市議会で「市立幼稚園再編の検討状況を考慮する必要がある」と答弁し、再編のあり方が焦点に浮上した。
有識者らで構成する市の諮問委員会は今年6月、公立幼稚園を28園から17園に減らすよう答申。
一方、付帯意見として幼稚園だけでなく保育園を含めて、幼保双方の機能を持つ「認定こども園」に移行することも「積極的に検討」するよう求めた。
このため、市は夏までにまとめる予定だった幼稚園の再編計画策定を「年度内」に延期した。幼稚園は午後5時半までだが、こども園化すれば午後7時頃までとなり、待機児童に悩む保護者の選択肢になる。
諮問委員会の委員長を務めた大阪総合保育大の山縣文治・特任教授は取材に対し、「認定こども園に移行すれば、利用者の増加も見込める」と指摘する。
答申では、最大8キロ離れた幼稚園も再編対象に含まれているため、保護者らからは反対の声も上がる。
再編計画で他園への再編対象となった大津幼稚園の保護者らは反対署名を集めたほか、同園を認定こども園化して残す提言書を市に提出した。保護者は「子育ての孤立を感じていたが、徒歩圏に幼稚園があったからこそ救われている」と話す。
市こども・若者政策課は「答申の付帯意見は重く受け止める必要がある」として、幼保の園長や現場職員らでつくる庁内会議を設け、保育園やこども園を含めた公立園のあり方を検討しており、12月までに素案を出す予定だ。
■草津市は
草津市では、15~19年度の計画に基づき全公立幼稚園と一部の公立保育園を認定こども園化し、公立園を16園から13園に減らした。16年4月には給料表を統一し、幼稚園教員の給与を下げる一方、保育士の給与を上げた。担当者は「対象職員一人ひとりに個別に説明した」とする。
大津市は、否決後も、市教組との交渉を続けている。幼稚園教員の待遇のあり方は、再編計画の策定後に、再び争点になりそうだ。
保護者と連携する京都橘大の青木美智子准教授は「他自治体のように、大津市は、未就学児の教育保育に関する全体的なビジョンを先に示すべきだ」と話している。
出典:読売新聞オンライン