
甲賀市信楽町で7月上旬に発生した土砂崩れから、2か月が過ぎた。現場は造成後50年以上が経過した盛り土で、県が2023年度と25年度に調査を行っていたが、「応急対策不要」と判定されていた箇所だった。事前察知の難しさを突きつけられた形で、県や市は今後の教訓としつつ、復旧の取り組みを加速させている。(田中志歩)
「雨が降る度に、また崩れたらと考える。台風の時期に入り不安だ」。同町で一人暮らしをする70歳代の女性は話す。以前は人の往来があった住宅地も、今では郵便配達のバイクやトラックが走るだけ。「静かになってさみしい。早く元に戻ってほしい」と願う。
土砂崩れは7月7日朝に発生。のり面が高さ15~20メートル、幅25メートルで崩れ、住宅2軒の敷地が崩落した。現在も、15世帯46人に避難が必要な「レベル4避難指示」が、10世帯22人に「レベル3高齢者等避難」が出されたままだ。
県は同月中旬、県と国が復旧に必要な費用を負担する災害救助法の適用を61年ぶりに決定。転居費用を、県と市が2分の1ずつ負担する補助金、公営住宅や賃貸型応急住宅を用意し、住民の避難を促している。今月14日時点で8世帯28人が入居しているという。
土砂の崩落が発生した場所は1974年以前に宅地造成のため、谷を埋めた盛り土だった。県は2023年度、静岡県熱海市の土石流災害を受けて施行された盛土規制法に基づいて、応急対策の必要性を調べる調査を行ったが、「崩壊等を示唆する変状が認められない」と判定していた。崩壊の予兆は確認できなかったという。
昨年度は、さらに盛り土の安全性を把握するための予備調査を実施。今回崩れた部分より上にあるのり面の一部で、傾斜が基準以上だったことを踏まえ、「災害防止対策は不十分」としていた。ただ、草木が植わり、土がむき出しではなかったことから「危険性は高くない」と判断していた。
土砂崩れを受け、市の要請で現地調査を行った国土交通省の道路防災ドクターは「長期的な変形が進行していた可能性がある」と指摘した。6月下旬からの雨で、雨水が土砂に滞留・浸透し、周辺地盤から地下水が流入したこと、盛り土の末端部付近で排水をコントロールする「調整池」の水位上昇が重なったことなどが要因と推定されるとした。
県内では法整備前に造成された盛り土が756か所、今回の現場と同じ住宅団地内にも、ほかに5か所あると確認されている。同様に基礎調査の結果、日野町の1か所を除いて「応急対策は不要」と判定されている。
市は現在、復旧に向けた調査を実施しており、崩落があった盛り土全体がその後も動いていないかを確かめるため、周辺に10か所の基準点を設け、位置情報を毎週測定している。地質を調べるボーリング調査や、盛り土のゆがみの観測などを10月末頃まで続け、12月末までに復旧の設計を完了させる予定だ。
三日月知事は記者会見で「盛り土の日々の変動や、今までにない水の流れ、形の変化にできるだけはやく気付き、対策を行う必要があると改めて突きつけられた。県民へも情報を届け、注意喚起していきたい」と話した。
出典:読売新聞オンライン