企業に苦戦 今年度受験倍率最低

就職活動で学生優位の「売り手市場」が顕著になる中、県警の警察官採用試験で受験倍率の低迷が続いている。民間企業に競り負け、今年度は過去最低を更新した。県警は危機感を募らせ、若者の正義感に強く訴えかける採用戦略を修正。初任給などの待遇面を大幅に改善したり、人気インフルエンサーが出演するPR動画を作ったりと、あの手この手の活動を展開している。(東川直央)
■■初任給過去最高
県警の採用試験は大卒と高卒を対象に毎年春と夏に計2回行われる。受験者数はピークの2001年は1603人に達したが、25年度は355人と2割にまで減少。倍率は県警に記録が残る00年以来、過去最低の4・67倍に沈んだ。
人手不足で初任給を引き上げる企業が相次ぐ中、警察官には「薄給、きつい、休めない」などというイメージがつきまとい、学生が就職先を考える際の選択肢から外されていることなどが要因とみられる。
そこで県警は、23年度分から大卒の初任給を毎年1万3000~2万8000円ずつ引き上げ、26年度分は過去最高の29万2000円になった。育児休業も取りやすくしており、24年度の取得率は女性が100%、男性は48%と民間企業の全国平均(40・5%)を上回った。
■■リクルーター厳選
県警は今春の採用試験から学生向けの説明会も見直した。これまでは県警本部と12の警察署で日中に開催していたが、学生が集まりやすいJR南草津駅前を初めて会場に設定。夜間や土日に計10回実施したところ、好評だったため、急きょ5回分を追加した。これにより、出願期間中(今月1日~4月27日)の回数は前年より17回多い計36回になるという。
一方、採用から5年以内の全員を任命していたリクルーターは、各署などから推薦された60人に絞った。OB・OGとして母校を訪問する役割だが、消極的なリクルーターも多かったため、部活動やゼミの後輩とのつながりを保っている若手に限定した。
リクルーターは説明会にも同席する。近年は学生から「正義感が強い人しかなれませんか」との質問も出るため、採用担当者と一緒に待遇面も詳しく伝える。
■■イメージ刷新

SNSの総フォロワー数が710万を超える大津市出身の女性インフルエンサー「Mumeixxx(むめい)」さんには若者への訴求力を期待し、啓発動画への出演を依頼した。むめいさんが白バイ隊や機動隊など4種類の業務を約1分間で紹介する内容で、今年2月の公開以来、インスタグラムでは23万回超再生されている。
さらに、栗東市出身の漫画家・森田まさのりさんのイラストを使った募集用ポスターも6年ぶりに刷新した。森田さんは、学生の親世代には「ろくでなしBLUES」などの作者として知られており、県警は親子で就職活動の話をする際に薦めてもらおうと、17年から起用。4回目となる今回は、初の交番勤務に向かう若手警察官のイラストを使って3552枚制作した。県内外の大学や駅、商業施設などに掲示している。

採用試験は5月10日に立命館大びわこ・くさつキャンパス(草津市)で実施される。採用担当者は「受験倍率はまだまだ下がると思われ、危機感しかない。給与面でも休みでも民間企業と何ら変わらないので、ぜひ多様な人材に来てもらいたい」と話している。問い合わせは警務課採用係(077・522・1231)。