愛荘の小学校 短縮分 独自学習に
小学校の授業時間を5分短縮して40分とし、捻出した時間を学校独自の学習などに充てる試みが、愛荘町立秦荘西小で行われている。子どもたちは自ら考える力を養い、教員の働き方にゆとりも生んでいるという。2030年度から小中高校で順次実施が見込まれる次期学習指導要領では、学校の裁量で柔軟なカリキュラム設定ができるようになる見通しで、今後同様の試みが広がりそうだ。(矢野彰)
子の計画性養う ■ 教員にゆとり
16日午後、同小で「のびのびタイム」という学習が行われた。担任が見守る中、子どもたちは英単語を書き写したり、漢字ドリルに取り組んだり。別の教室では理科の天体を学んだり、タブレット端末を操作したり、学ぶ内容は皆バラバラだ。
同小は文部科学省の研究開発学校に指定され、昨年度から40分授業を始めた。小学校の授業は学校教育法の施行規則で45分が標準と定められ、時間割は午前4コマ、午後2コマだった。これを1コマ5分減らして40分で午前5コマ、午後1コマに変え、生み出した30分のうち、午後に20分の独自学習を充てるようにした。残りの10分間は放課後に回し、教員が子どもの指導に関する情報共有などをしている。
近年、教員の多忙化が指摘されている。同小でも児童の情報共有や指導相談はままならず、授業準備は勤務時間外にも行われていた。集中力が続かない子どもへの対応も課題で、40分授業を先行する東京都目黒区に倣い、授業や学校運営の改善を始めた。
20分の独自学習では、自分で計画を立てる力を養うことを目標にしている。のびのびタイムは火曜と木曜に実施。40分授業の導入に併せて宿題を1週間分まとめて出すスタイルに変えており、金曜には宿題をどの日にやるかなどを計画する。漢字学習を行う曜日もある。
最初は戸惑っていた子どもたちも「自分で選ぶのは大変だけど、得意分野を伸ばせる」「後回しにしていた宿題にこつこつ取り組み、時間を計画的に使えるようになった」など前向きに受け入れている。
相田宜紀教頭は「生み出した時間で子どもたちのためにできることが増えた。放課後の『余白』が教育を活発にしている」と手応えを感じている。
草津市は、来年度から全市立小で40分授業の導入を決めた。今年9、10月には、午後の20分を「学びタイム」と名付けて試行。市立老上小では9月4日、6年生は自分で決めた学習に取り組み、5年生は6時間目と合わせた1時間で、ミシンで布を縫う授業に取り組んだ。
6年の女子児童は「お昼には『もう疲れた』って感じるけど、5分短いだけで集中力が続く」と話した。一方、保護者には学習面での懸念もあり、同小では、家庭学習の手引きを配布したという。
上原忠士校長は「子どもには自ら考え計画を立てる力を養ってほしい。教員にとっても、授業のやり方を見直し、質を高めるきっかけになる」と話している。
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教科の授業時数を減らしたり、新しい教科を設けたりするには、今は国の審査が必要だ。柔軟なカリキュラム作りのため、文科省が9月に示した次期学習指導要領の枠組みには、義務教育での「調整授業時数制度」の創設が盛り込まれた。
検討中の仕組みでは、国への申請は不要。学校判断で教科の授業時数を減らし、生み出した時間を別の教科に上乗せしたり、新しい教科を設けたりできる。学校裁量の学習もできるという。
制度を先取りする秦荘西小のような取り組みは今年度、9都道府県の46小中学校で行われており、文科省は来年度、さらに増やす方針だ。