
野洲市妙光寺の 中畑 ・ 古里 遺跡で行われた発掘調査で弥生時代の 掘立柱 建物跡が見つかったことを受け、現地で商業施設の開発を予定する事業者は、建物の 柱穴 の一部を保存する意向を示した。野洲市教育委員会が明らかにした。市側の要望を受けた措置で、市教委は月内に保存概要を公表する。(河村真司)
県文化財保護協会によると、同遺跡は弥生時代から中世にかけての集落遺跡で、「近江富士」の名で知られる三上山などの近くに立地している。これまでの調査で住居や墓などが広範囲に点在していたことが確認されている。
今回の発掘調査は、遺跡のエリア内にある大型店舗の出店予定地に文化財が埋蔵されている可能性を踏まえて実施された。文化財保護法は、遺跡を現状保存できない場合、事前調査を行って記録を残すよう定めており、同協会や市教委など3機関が昨年12月~今年8月に調査を行った。
掘立柱は、地面に穴を掘って柱を直接立てる建築様式のこと。発見された柱穴は 楕円 形(短軸約1~1・5メートル、長軸約1・5~2・5メートル)で、約200平方メートルの範囲に16か所あり、県内最古、最大規模という。穴の底は傾斜しており、柱を立てる際に利用されたようだ。
近くのくぼ地からは 祭祀 で使われる土器片が多く出土しており、三上山を拝む聖域的な空間だったとみられている。
この建物跡については、「国史跡級」と評価する識者もいる。
ただ、保存のあり方を巡り、同市の桜本直樹市長は「民間開発の場所なので難しい。開発を求める市民の声もある」として、公費投入による公有地化は困難との見解を示していた。
市教委によると、事業者は当初、設計変更に難色を示していたが、8月下旬に一部保存に応じると市教委に回答した。柱穴を損壊しないよう、店舗の基礎を造る位置を配慮するなどして一部保存する方向で、市教委と事業者は、解説パネルの設置など詳細について協議を続ける方針。保存の対象外となる柱穴は、形状や出土遺物を記録する作業をすでに終えたという。
市教委文化財保護課の担当者は、「相手方は当初、保存は厳しいという判断だったが、貴重な遺構であることを説明し、保存に向けて検討してもらえた」と一安心しつつ、「すべて保存できれば、将来の調査で新しい知見が得られたかもしれない」と複雑な心境ものぞかせた。
出典:読売新聞オンライン