
秋の叙勲が発表され、県内からは49人が選ばれた。様々な分野で顕著な功績を上げた人に贈られる「旭日章」が12人、長年にわたって公共的な業務に従事した人をたたえる「瑞宝章」が37人だった。発令は3日付。受章者2人を紹介する。(青山大起、河村真司)
50年以上にわたって国宝・重要文化財に指定された社寺の保存・修繕に尽力してきた。
幕末期の1857年から続く屋根葺き職人の家に生まれ、高校卒業後、6代目として父から家業を受け継いだ。檜皮葺きは、ヒノキの樹皮を一枚一枚ずらして重ね、屋根を覆っていく伝統技法。国宝・西明寺三重塔(甲良町)や竹生島にある宝厳寺の唐門(長浜市)などの屋根を手がけ、2009年には厚生労働省の「現代の名工」にも選ばれた。
現在は、屋根葺きは7代目の長男らに譲り、自身は樹皮を「檜皮包丁」と呼ばれる専用刃物で厚さや形を整える作業をこなす。「現場で使いやすい皮をこしらえたい」と産地によって粘り気などが変わる皮の状態を見極め、視覚と手で丁寧に仕上げる。やりがいは、自らの手で加工した檜皮で屋根が美しく生まれ変わった様子を見ることだ。
担い手不足が課題となる中、文化財指定の建造物は年々増える。次代に技法を継承しつつ、「体が動かなくなるまで続けたい」と笑顔で語る。
牛乳に付加価値を生み出そうと1988年にチーズ作りを始めた。本場欧州のイタリアに2度、作り方の極意を学びに渡った。10年前に牧場に工房を整え、丹精込めて生み出した「ラクレット」は昨年、農林水産大臣賞に輝いた。
日本チーズ協会の初代会長として、国産品の振興にも尽力してきた。「国内産の牛乳を使うので、日本の酪農家を守ることにもつながる」
47都道府県の郷土食に含まれる乳酸菌を使い、特色あるチーズ作りに取り組んでいる。滋賀の郷土食「ふなずし」や、京都の漬物「すぐき」、石川の 魚醤 「いしる」からも味わい深いチーズが生まれた。
「信楽は涼しく、いいミルクが搾れる。滋賀の風土を生かした、おいしいチーズを作りたい」。工房の名は五穀 豊穣 になぞらえて「五乳豊穣 処 」と命名した。チーズやヨーグルトをはじめ、様々なおいしさを生み出す牛乳の底力を信じている。
出典:読売新聞オンライン